2008年12月6日土曜日

Ethics and Leadership

第1タームには、Ethics and Leadershipという授業がある。
これはその他の授業とは違って、2セッションで完結する授業。

ここでもケーススタディを行った。
お題は、

あなたは血液販売会社のCEO。
中央アメリカのとある国で壊滅的な地震があり、 その国の大統領から
真夜中に電話があった。大統領は、あなたが最後の 頼みの綱、
どうか死に直面している100,000人の人々を助けて欲しいと言っている。
ただその国の経済は破綻しており、100万ユーロしか血液を買うために
お金を使えない。あなたはその国の大統領に対し、100,000ユニットの血液を
いくらで販売するか、返事をしなければならない。販売価格は以下から選択する。
尚、こうした自体は滅多に起きない。また、いかなる団体もこの会社に対し
補助を出さない。

  販売価格/ユニット  救済出来る人数/10万人   業績への影響
1.  10ユーロ           10万           短期的損失
2.  25ユーロ            4万         プラスマイナスゼロ
3.  50ユーロ            2万           通常の利益
4. 100ユーロ            1万            大きな利益

結果、クラス52人中(何人かは欠席したようだ)、42人が1.を、7名が2.を、
1名が3.を、2名が4.を選んだ。自分は1.を選んだ。

興味深いのは、3.を選んだのは、医者。4.を選んだのはNGO勤務経験者、
そして普段は至って物静かなIT企業勤務経験者であった。

3.を選んだ医者は、自分は患者が生きるか死ぬかの状況で、常に何らかの
判断を強いられる環境に身を置いており、こうしたことはよくあることだ、
それよりも株主の利益に忠実であるべきだ、と訴えていた。
彼は確かキャンプに駐留していた医者で、以前、患者がどれだけ長生きするかは
治療費次第、治療費に見合った治療をする、治療費が払えなくて死んでいく
人もいる、 と言っていた。

4.を選んだ学生も、南米の小さなNGOに勤務していた。
小さな組織である以上、 草の根的な仕事をしてきたのだと思う。
彼女もまた、何らかの形で 人を救うことが仕事だった。彼女も医者と同様に、
株主に対し忠実であるべきという考えをしていた。

人の命や生活を第一線で守ろうとしている彼らが、こうした問題に対し、
株主に忠実たれ、と訴えていたことは少なくとも自分にとっては衝撃だった。

彼らが日々強いられた決断というものは、その他の学生がオフィスビルで
強いられる 決断に比べよりシビアなのかもしれない。
彼らは目をそむけたくなるような現実を 常に直視することを強いられて
きたのかもしれないのだ。
ただひたむきに、自らのプロフェッショナルとしての使命を全うし続けることで、
自らを維持し、現実と共存できたのかもしれない。

逆に、自分も含め大半の学生は、1.を選んだ。
この守られた学校のキャンパスの中では、理想的な1.を選ぶことも簡単だ。
だが、いざ自分がこうしたCEOの立場に本当に立たされた時、
本当に1.のような選択肢を選ぶことができるか?
株主、金融機関、取引先…様々なステークホルダーとの関係が壊れる
かもしれない、そうしたら会社の従業員はどうなるのか…
こうした数えきれない程の要素を考慮した時、本当に1.を選ぶことができるか?
このケースでは1.を選んだとしても会社は短期的な損失を被るだけだ。
だが、これよりもっと厳しい状況にさらされることが実際のCEOにはあるかも
しれない。

どうもこの日ばかりは、1.を選んだ大半の学生達が、
分厚い城壁の中の現実を知らない優等生に思えてならなかった。
もちろん自分を含めて。

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