オランダという国は穏やかな国だというイメージを持っていたので、首都であるアムステルダムも静かなもんなんだろうとばかり思っていた。ところが空港に到着すると驚いた。空港は綺麗に整備されていて、飲食店やファッションの店がたくさん並んでいる。スペインやイタリアといったラテンの国とは少し違った匂いがした。
だが、空港からアムステルダム中央駅までの電車は打って変わって汚かった。そして車内も暗かった。空港の綺麗さとは対照的である。外は夜だったのだが、見る限り日本の景色に似ている気がした。マンションやビルが結構多く、その明かりが灯っている様が、総武線で浦安あたりを通りすぎる時に見える景色に似ているのだ(大分主観的だが)。
アムステルダム中央駅も空港と同様に結構たくさんの店があった。フレッシュジュースを売っている店もある。食べ物を見たくもなかった自分であるが、久々に食欲が出てきた。ゲルマン系の国に来た途端に元気になったので、やっぱりラテン系は合っていなかったのではないかという気持ちがこの当たりで大分強くなっていった。但し自分は周りの人間に「君はラテン系だよねー」とよく言われるのだが。
アムステルダムはものすごく寒くて、ホテルの部屋も暖房が効いているのかいないのかわからないくらいだった。こんなホテルは早く出て夕飯を食べに行こうと、街で最も賑わっているダム広場周辺に繰り出した。ダム広場周辺は、渋谷センター街みたいに汚くてやさぐれた感じがしていた。でもそれが逆に面白そうな雰囲気を醸し出していた。
オランダ料理屋を見つけられず、それに肉が食べたかったので、結局アルゼンチン料理屋に入った。マドリッドと全く変わらない選択肢なのだが、不思議とスペイン語で話しかけられると懐かしい感じがした。しかもそこで出てきたステーキは美味しかった。ミラノのオニオンスープに続き、美味しい料理に当たっている。大分胃の調子も治ってきておりご機嫌であった。
料理を済ますと、周辺をさらに歩いてみた。何やら怪しい雰囲気の通りに入ってしまった。どうみてもガラの悪そうな若者がたくさんたむろしていた。そして「coffee shop」と掲げられた店がたくさん軒を連ねていた。そこら中で異臭がした。そう、みんなマリファナを吸っているのだ。オランダではマリファナは合法らしく、年老いた夫婦までもがとてもリラックスしながらマリファナを吸っている。coffee shopはマリファナ屋ということらしい。なんだよそれ、と思ったのは、coffee shopのドアや窓には、「Tabaccoは禁止されているが、SmokingはOKだ」と書いてあることだ。(ただ日本の外務省のページをみると、どうも今やオランダでもマリファナは合法ではないと書いてある。)
アムステルダムはマリファナ以外でも有名である。アムステルダムの運河はとても綺麗なのだが、その綺麗な運河に沿って、赤い電気に照らされた大きな窓のある建物が並んでいる。そしてその窓からは裸の女性が自信満々の表情で男性を誘っている。「飾り窓」である。これもまたオランダでは合法であるらしく、昼間っから公然と営業が行われている。もはや一種の観光スポットと化していて、ツアー客がコンダクターから説明を受けている。小さな子供や、多感であろう少年少女達もわいわいとこの飾り窓を見物している。
夕食はオランダ料理を食べようと、レストランに入ろうとした。しかしそこのウェイターはもう営業時間は終わったという。仕方なく、周辺の庶民的中国料理屋に入った。美味くなかった。塩味が不足していて、チャーハンが特に残念な味をしていた。中国料理でここまで外したのは初めてである。依然小腹が空いていたので、何か食べ物は売っていないかと徘徊していると、さっき入ろうとした営業時間が終了しているはずのレストランがまだ営業をしていた。
あれ、おかしいな…。おそらく、これは人種差別だったではないかと思う。店内には、アジア人がいるのだが、その連れは皆白人であった。それに先ほど来たときよりも客が増えている気がする。これには本当にいらついた。本当のところはどうだったのかはわからないが、考えれば考えるほど腹が立った。怒りと悲しみが混ざった感じ。露店で売っていたおいしいエクレアが口に入るまで、この何とも言えない気持ちはおさまらなかった。
次の日、ベルギーの首都ブリュッセルに行くため、アムステルダム中央駅で予約していたユーロスターに乗ろうとした。しかし驚いたことに、駅の店員は「この予約は無効だ」と言い出した。「この予約番号はベルギーやフランスで有効だが、オランダで乗車する場合は使えない。オランダで再度切符を買って、この予約した切符はブリュッセルで払い戻してもらえ」と言っていたのだ。そんな馬鹿な、ユーロスターはEU圏内にすべてネットワークが張り巡らされているのだろう?チケット予約がオランダでは無効で、ベルギーでは有効だなんてことがあるのだろうか?だがそれでも結局解決策はなく、アムステルダム発ブリュッセル行きのチケットをもう一回買った。今度はユーロスターではなく、古びた鈍行電車だった。
短い間にも色々なことがあったアムステルダムであったが、総じて刺激的であり楽しかったなあと思った。アムステルダムからブリュッセルに向かう途中、デン・ハーグやロッテルダムを通過した。欧州ではあまり見ることのなかった高層ビルが結構たくさんあって、日本を彷彿させた。オランダは、人口1600万人位の小国ながらフィリップスやロイヤルダッチシェル等グローバル企業がある。それにサッカーやスケートも強い。アムステルダムの混とんぶりには衝撃を受けたのだが、やっぱり偉大な国なんだろうなあ、なんてことを車内で考えていた。
しかしこうした満足感は、次の都市ブリュッセルに入った途端に失せることになる。
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